常磐線の北千住駅から南方に伸びていた足立市場専用線は、1980年代に廃止され跡地は遊歩道になっている。それだけなら全国によくある貨物線跡だが、この専用線では市街地にも関わらず線路施設が残っているのだ。
Googleマップで地図を見るやっちゃば緑道入口
北千住駅の西口改札を出て南へ歩くこと5分。常磐線の線路脇に遊歩道があります。これが今回調査する「足立市場専用線」廃線跡の「やっちゃば緑道」です。
とはいえ、私見で恐縮ですがこの敷地が本当に線路跡かどうかはかなり怪しいと思います。この写真のすぐ後ろは線路のすぐ近くまで工場(明らかに最近出来たものとは思えない建物)が迫っていて、駅まで繋がっていたはずの廃線跡としては不自然です。つくばエクスプレス建設時に、用地捻出のため北千住駅付近の常磐線線路は廃線跡上に移設されたという話もあります。おそらく開設当初は線路跡上だった「やっちゃば緑道」が、つくばエクスプレス建設時に移設されたのが真相と思われます。
京成電鉄高架下
さらに数百m進むと、京成本線の高架橋が見えてきました。写真に写っている2つの橋桁のうち、左側をつくばエクスプレスと常磐線下り、右側を常磐線上りが使っています。なお、かつて常磐線は上下とも左側、足立市場専用線は右側の橋桁を通っていたそうです。
京成電鉄の高架橋です。頭上に響くスカイライナーの轟音を聞きながら、更に先に行きます。
先に行こうとしていた時のことです。危うく通り過ぎるところでした。まさか住宅密集地のど真ん中に、こんなものがあるとは夢にも思わず……。
引上げ線の終端部のコンクリート路盤がそのまま残っています。ここの右側には住宅が所狭しと並んでいて、左側は駐車場(貨物線路跡?)になっているのに、この部分だけ転用されるどころか全く手付かずのまま残されています。線路脇に貨物線跡が残るだけなら珍しくありませんが、常磐線線路との間にはやっちゃば緑道があるため、ここは線路脇ですらないのです。いったいなぜ突然こんなものが現れたのか。
車止めのコンクリートも残っています。標識を撤去した跡でしょうか、コンクリートがえぐられています。
線路は撤去されていますが、バラスト(?)と思われる砂利がところどころ残っています。距離標も横倒しになって置いてありました。
なぜこの終端部だけ撤去されなかったのか、ヒントは錆びた柵に取り付けられていました。この土地は今でもJR東日本が所有していて、京成電鉄に高架用地として貸し出しているようです。JRと京成電鉄、さらに緑道を管理する自治体の権利関係が絡みあい、また高架下で土地利用も難しいことから、今でもかつての線路設備が残されているのだと考えます。
路地を通って反対側から見てみます。薄暗い高架下で細々と余生を送るコンクリート路盤。車止めにかなり接近して建っている家は線路が廃止された後のものでしょうか。
足立市場
京成の高架をくぐった先で軌道跡は常磐線の線路から別れ、右に曲がります。線路跡は道路上の緑地になっていました。
その先は今までのようなタイル舗装ではなく、砂が敷かれています。心ある人が整備したのか、単に予算が不足しただけなのかは分かりませんが、いい雰囲気です。
未舗装の道を数十m進むと足立市場です。貨車の荷役に向いていそうなやたら細長い建物が見えてきました。
現在はトラックの荷役(or駐車)に使われているこの建物、よく見てみると専用線の貨物ホームがそのまま残っていました。
残念ながらホームは途中で一部が壊され、トラックの通路になっていました。
建物の先はすぐ隅田川の堤防に突き当たります。先ほどの車止めのこともあって少し期待しましたが、線路の名残は確認できませんでした。
ところで専用線の線路跡は交差点を斜めに横断して足立市場の敷地内に入っています。他に引き上げ線の敷地がないので、入換時はこの交差点を横断して本線に引き上げていたのでしょうか。
今回はとくに専用線が目的で行った訳でもなく、いわば「ついで」で訪れましたが、その割には思いがけない鉄道の痕跡を発見できました。東京都内でも、まだ眠っている廃線跡がありそうです。
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