【あの幹線も】JR東日本が「必殺徐行標識」を導入

【あの幹線も】JR東日本が「必殺徐行標識」を導入

はじめに

JR各社ではローカル線を中心に経費削減のための徐行区間を設けていることがあります。JR西日本のものが有名ですが、他のJRでも設けられていることがあります。以前の記事で解説している通り、落石や倒木の恐れがある区間で、事故防止のため列車が安全に停止できるような速度で走行するため行われているものです。

JR西日本の徐行区間
JR西日本の徐行区間

列車の速度を制限するような標識類として、従来は速度制限標識や徐行信号機がありました。速度制限標識は白色の四角形の板に制限速度や区間長さを書いたもので、JR西日本の徐行では速度制限標識が用いられています。一方、徐行信号機は黄色の円形の反射板の下に制限速度を記載した白板を取り付けたもので、主に工事区間や線路に異常がある場合など一時的な速度制限を行うために用いられます。徐行信号機による徐行を解除する地点には、緑色の円形の反射板を用いた徐行解除信号機が設置されます。いずれも旧国鉄時代から引き続き各社でほぼ共通のデザインが用いられています。

吾妻線万座・鹿沢口駅付近の徐行信号機
吾妻線万座・鹿沢口駅付近の徐行信号機

そのようななか、JR東日本は2022年頃から徐行区間専用の標識(いわば「必殺徐行標識」)を導入しています。本記事ではこのような標識について述べていきます。

なお、本記事では便宜上これを「標識」と呼んでいますが、後に述べるように標識のデザインや実際の使用方法は速度制限標識よりも徐行信号機に類似しています。部内では標識ではなく信号機として扱われている可能性も否定できないということを予めお断りしておきます。

※記事公開当初、「徐行標識」の導入を2022年頃としていましたが遅くとも2015年頃には目撃情報があるようです。確認不足をお詫び申し上げます。

JR東日本が導入した「徐行標識」

新たに導入された標識は2種類で、正式な名称は不明ですが本記事では便宜上「徐行標識」「徐行解除標識」と呼びます。「徐行標識」は黄色の菱型の板に黒色の数字で制限速度が記載され、またその下の細長い白板に区間長さが記載されています。「徐行解除標識」は緑色の菱型の板です。板の形状などに違いがあるものの、色合いは徐行信号機、徐行解除信号機にそっくりです。

徐行標識(磐越東線三春~舞木間)
徐行標識(磐越東線三春~舞木間)
徐行解除標識(磐越東線三春~舞木間)
徐行解除標識(磐越東線三春~舞木間)

「徐行標識」はJR東日本各地のローカル線で導入されています。多数のローカル線をかかえる東北本部では、福島県が線路設備を保有する只見線を含めて多くの区間に「徐行標識」が設置されています。また、首都圏本部長野支社管内の飯山線、同高崎支社管内の上越線でも設置を確認しています。特に上越線は多数の貨物列車も運行されている上り線土合~湯檜曽間のうち土合駅ホーム端部付近~第一湯檜曽トンネル入口間の4kmあまりの下り坂が徐行区間に指定されています。

徐行標識(只見線本名~会津越川間)
徐行標識(只見線本名~会津越川間)
徐行解除標識(只見線本名~会津越川間)
徐行解除標識(只見線本名~会津越川間)

制限速度は多くの場所で45km/hが指定されており、その他の制限速度が設定されている区間があるのかは不明です。

なお、少なくとも2022年夏時点の山田線や2024年春時点での磐越東線では「徐行標識」と通常の速度制限標識が併用されていました。徐行区間内にその徐行速度より高い速度の速度制限標識があっても無視され、また徐行区間内に速度制限解除標識があっても徐行は解除されません。「徐行標識」は速度制限標識とは異なるレイヤーで制限速度を表示していると言えます。

徐行区間内の速度制限標識(山田線上米内~区界間)
徐行区間内の速度制限標識(山田線上米内~区界間)
徐行区間内の速度制限解除標識(山田線上米内~区界間)
徐行区間内の速度制限解除標識(山田線上米内~区界間)
徐行標識とその奥の速度制限標識(磐越東線江田~川前間)
徐行標識とその奥の速度制限標識(磐越東線江田~川前間)
徐行区間内の速度制限標識(磐越東線江田~川前間)
徐行区間内の速度制限標識(磐越東線江田~川前間)

徐行区間の設定は経費削減のためのサービス低下であり、雑誌等にもあまり情報が出てこないのが実情です。今後、この「徐行標識」や「徐行解除標識」の正式な名称や位置づけが明らかになる日は来るのでしょうか。

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