高雄捷運環状輕軌は、高雄の市街地を囲むように建設されるLRTです。海側の半周弱は、高雄臨港線などの貨物線の路盤を転用して2016年6月に先行開業しました。調査時(2016年2月)現在、籬仔内~凱旋中華間で無料の体験乗車が行われています。
前鎮之星駅
試乗区間で唯一の地下鉄連絡駅、前鎮之星駅から体験乗車を始めます。駅の改札を出て、階段を上ると停留所はすぐ目の前にあります。
景観に配慮するため、架線は設置されておらず軌道内も緑化されています。環状輕軌では車両基地も含め、ほとんどの線路に溝付きレールが使われています。
各駅には地下鉄の剛体架線のような充電装置が設置されています。LRTの車両は僅かな停車時間の間にパンタグラフを上げ、車載バッテリーを充電しているようです。
車両は3両の連接車体です。運賃精算は主にICカードを使用するため、各出入口のわきにICカードリーダーが設置されています。
架線が省略されているため、前面展望から見る空も広く感じます。臨港貨物線時代の踏切だったと思われる交差点では、警備員が安全確保を行っていました。
籬仔内駅
籬仔内駅は、第一臨港線(臨港貨物線)の前鎮操車場付近に設けられた駅です。当駅付近より南の貨物線は廃止され、LRTに転用されました。
構内には貨物側線を撤去して建設されたLRT車両基地(前鎮機廠)があります。バッテリー駆動の路面電車とはいえ、基地内には架線が張られています。
手前側の建屋が検修設備で、奥に6本の留置線があります。隣の線路はかろうじて撤去され残った高雄臨港線の末端部で、将来のLRT延伸時には撤去されてしまう運命にあります。線路の先にある車両工場(高雄機廠)も2018年に移転し、第一臨港線は全面廃止される予定です。
ちなみに、駅と車両基地の間に踏切があった痕跡が残っていました。線路は新しく敷きなおされてしまいましたが、コンクリート製の警戒標識が貨物線としての歴史を伝えています。
高雄港駅
環状輕軌のうち約半分は貨物線の第一臨港線・屏東線の敷地を転用して建設されています。奇しくもこの貨物線は長方形のような形の環状貨物線になっていて、そのうち旅客線との共用区間を除いた3辺がLRTに転用される形です。
港町として栄えた高雄の物流の中心で、屏東線の起点としても知られた高雄港駅は鉄道公園として整備されています。将来はこの付近にもLRTが走る予定です。
構内にはかつての線路はもちろん、転轍てこや分岐器の信号装置までそのまま保存(放置?)してありました。その手の趣味の人にはうれしい展示です。
広い公園の敷地では昔の機関車・客貨車を保存していたり、コンテナアートの展覧会が開かれていたりしていました。下の写真は、その一角にあった高雄港駅の古い空撮写真です。すさまじい数の線路。
高雄港駅の先はきれいな遊歩道として整備してありかつての線路は跡形もないようにも見えますが、実際はアスファルトの下に線路が残されています。LRTが開通すれば、この線路も撤去されてしまうのでしょうか。
※本特集記事は2016年5月に配布したフリーペーパーの内容を中心に、一部追記したものです。
書籍『臺灣鐵路管理局西部幹線配線略図』(8月14日(日)頒布開始予定)
台湾の国有鉄道の配線略図です。縦貫線北段・南段、台中線、海岸線など計9路線の配線略図を収録し、各路線の主要駅を写真で紹介しています。
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