工事観察記
半年~1年に1度程度更新予定です。
東武鉄道伊勢崎線(東武スカイツリーライン)竹ノ塚駅付近を高架化し、事故や慢性的な渋滞の原因となっていた2箇所の踏切を除却する工事です。
半年~1年に1度程度更新予定です。
竹ノ塚駅は、私鉄最長の複々線区間として有名な北千住~北越谷駅間に位置する、普通列車のみが停車する駅です。駅の北側と南側にそれぞれ踏切があり、通過列車が多いことから「開かずの踏切」となっています。
周辺の西新井駅以南および谷塚駅以北は1980年代までに高架化されているのに対し、竹ノ塚駅付近は地平構造のまま存置されていました。これは、沿線に営団地下鉄検車区(現・東京メトロ千住検車区竹ノ塚分室)および東武鉄道西新井工場(廃止)といった地平の車両基地があり、高架化によってこれらの車両基地への入出庫が困難になるためだったと言われています。実際、駅に高砂検車区が隣接する京成高砂駅でも同様の理由で高架化が見送られてきました。同駅では現在でも本線系統の列車が地上を走り、2つある踏切では遮断時間が長くなっています。
しかし貨物列車の廃止や車両性能の向上で急坂の設置が可能になったこと、また2005年に駅南側の踏切で死傷事故が発生(後述)し開かずの踏切問題がクローズアップされたことから、沿線自治体の足立区を事業主体として連続立体交差事業が開始されました。
現在、東京オリンピックが開催される2020年度の事業完成を目指して工事が続いています。工事完成により駅両側の踏切は除却される予定です。
工事の手順は以下の通りとなっています。
工事は竹ノ塚駅を中心とする約1.7kmの区間で行われます。この区間の南端で伊勢崎線は補助260号線の下をくぐり、北端で補助262号線の上を跨ぎます。どちらも立体交差する道路を移設するのが困難なことから、この間で工事を行うことが決定されたのだと思われます。
工事区間南部では、下り急行・緩行線が高架へ登り、メトロ検車区からの車庫線を下に通します。現在、緩行線と検車区を行き来する際には下り急行線を支障するため、今回の高架化でこの平面交差も解消されることになります。
車庫線が本線と合流した先が、竹ノ塚駅ホームになります。現在竹ノ塚駅構内には、検車区に入区する車両が下り急行線の列車の通過を待つ中線があります。高架化後は平面交差が解消されることから、この中線は設置されないようです。
駅北側には、現状通り折り返し列車のための引上線が設置されます。ただ、現状で3線あるものが2線に減らされてしまう模様です。問題なのは、高架化のいずれかの過程で引上げ線が使用不能になってしますことです。2013年のダイヤ改正以降、この引上線は一日中使用されているため、高架化工事中は何らかの代替措置が必要になると思われます。過去には、仙石線多賀城駅高架化の際に多賀城駅折り返しの列車を東塩釜駅まで回送して折り返した例もあり、どのような措置が取られるのか注目です。
この工事が始まるきっかけとなった踏切事故に関連して、踏切に関する私見を述べたいと思います。
2005年3月15日夕方、駅南側の踏切で4人が死傷する事故が発生しました。直接の原因は、当時手動だった踏切の遮断棹を操作員が上げてしまったことです。しかし、以前から踏切の遮断時間が長く問題になっていたことや、警報機が鳴っているのに踏切を開けることが常態化していたことは衆知のとおりです。そもそも踏切が手動だった理由も、「通過列車が多すぎて自動化できない」という異常なものでした。
どうしてこのような事態が発生したのかを考えるに、そもそも複々線区間に踏切を設けること自体が無謀だったのではないでしょうか。旧国鉄の複々線化事業では、(潤沢な国家予算を使えたというのもありますが)対象区間の踏切をすべて除却していました。現在のJR東日本には、戦前に複々線化された東海道本線の一部など僅かな例を除いて多線区間の踏切はありません。私鉄に関しても、関東の複々線区間で踏切があるのは極めて稀です。
もちろん、車両基地の出入りのためにホームを地平に置かなければならなかったという事情は考慮されるべきです。しかし、それなら急行線のみ高架化して踏切の通過列車を大幅に減らすなど、打つ手はあったはずです。複々線化による通過列車増加を見誤った東武鉄道や沿線自治体の判断が、この事故を招いたのではないでしょうか。