はじめに
山陰本線は京都~幡生間673.8kmを結ぶ路線です。かつては中国地方日本海側の大動脈として全線を直通する列車もあったようですが、現在では地域輸送が中心となり、特に特急列車が運行されない益田以西は利用状況がかなり悪くなっています。中でも益田~長門市間は2021年度の輸送密度が223人と極めて低く、日中には列車間隔が3時間以上空く時間帯もあります。
区間 | 輸送密度(人) |
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京都~園部 | 32,584 |
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園部~福知山 | 3,484 |
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福知山~城崎温泉 | 2,110 |
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(中略) |
出雲市~益田 | 746 |
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益田~長門市 | 223 |
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長門市~小串、長門市~仙崎 | 292 |
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小串~幡生 | 2,006 |
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全区間 | 3,245 |
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2021年度輸送密度(JR西日本資料より)
今回、2016年以来7年ぶりに現地を訪れたところ山陰本線益田~東萩間で交換駅がほぼ半減していましたので、この区間の交換駅削減のいきさつを記事にまとめました。
2016年時点の配線
2016年時点の配線がこちらです(過去に作成した配線略図のため、乗越分岐器を横取装置の記号で描いていることを申し添えます)。益田~東萩間は、飯浦駅と越ケ浜駅を除きすべて交換駅となっています。須佐駅、戸田小浜駅には上下本線のほかに待避線も設置されています。
過去、この交換設備は最大限に活用されていました。昭和43年10月ダイヤ改正の時刻表を見ると、この区間には10.5往復の普通列車と5往復の特急・急行列車が運転され、すべての交換駅で列車交換が行われていました。特筆すべきところでは、須佐駅では夜行急行「さんべ」どうしの交換が午前2時30分に行われていたようです。また、戸田小浜駅の待避線も普通列車を優等列車が退避するのに使用していたようです。
国鉄末期の1986年6月の時刻表でも、普通列車11往復(快速列車1往復を含む)、特急・急行列車3往復が運転されています。このダイヤでも交換駅は全て使用されていますが、戸田小浜駅のかわりに須佐駅で普通列車の退避が設定されていました。
JR化後、2005年までにこの区間の優等列車はすべて姿を消し、以降普通列車が9~10往復程度運行される運行形態が現在まで続きます。これに伴い戸田小浜駅、須佐駅の待避線は用途を喪失しました。また、交換駅についても江崎駅は2016年、宇田郷駅は2010年の改正より使用されなくなりました。奈古駅も2009年のダイヤ改正で列車交換がなくなり、その後しばらく普通列車の折返しに使用されていましたがそれも2016年に木与駅折返しに変更され、交換設備が不要となりました。
このように、2016年の訪問時点で3つの交換駅で列車交換がなかったことになります。実は2016年の訪問時、宇田郷駅・奈古駅の2駅で下車して写真を撮影していました。
列車交換はないものの、いずれの駅でも上り列車は上り本線、下り列車は下り本線を発着しており、信号機も生きていました。しかし、宇田郷駅の跨線橋は日本海の潮風に長年さらされた結果かなり激しく老朽化していたのを記憶しています。場所によっては、踏み段を踏むのが不安なくらい腐食している箇所もあったと思います。
2023年の再訪
その後、列車交換がなくなった駅では交換設備が使用停止された姿が確認されました。線路はそのまま残った状態ですが、分岐器が固定され、場内信号機・出発信号機も撤去されていてダイヤ乱れ時等の列車交換も不可能となりました。老朽化していた宇田郷駅の跨線橋も同時期に撤去されました。
さらに、2023年4月の訪問時、本線からの分岐器も撤去されいずれの駅も完全に棒線駅となったのを確認しました。
江崎駅、宇田郷駅、奈古駅の各駅で分岐器が撤去されたほか、江崎駅・宇田郷駅の側線(かつての貨物荷役線、現在はおそらく保守用に使用)の分岐は横取装置化されました。使用されなくなった着発線や安全側線の大半は本線から切り離された状態で残存している様子でしたが、撤去されるのも時間の問題かもしれません。
また、戸田小浜駅、須佐駅にあった待避線も撤去されていました。優等列車5往復が運転された往時の賑わいを現在に伝える生き証人ではありましたが、普通列車のみの運行となった現在では無用の長物と化していました。
今回取り上げた益田~東萩間のすぐ近くの山陰本線長門市~小串間は、本記事執筆時点で大雨による橋梁被害のため長期運転見合わせとなっています。暗い話題が続く中国地方のローカル線ではありますが、引き続き注目していきたいと思います。
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