【砕石工臨】吾妻線小野上駅の構内配線改良

はじめに

小野上駅構内

小野上駅は吾妻線の駅です。旅客輸送上は単なる途中駅ですが、国鉄時代より構内に砕石輸送用の引き込み線が設けられており、主に高崎支社管内の線路のバラストで使用される砕石が発送されてきました。

吾妻線配線略図(2013年11月現在・抜粋)

駅は2面2線の配線で、南側にはかつての貨物扱いのための荷役線、北側に砕石線がありました。北側の砕石線は途中のホーム横のあたりに入換作業のための袋線があり、その先で本線と離れた先に砕石の荷役線がありました。

砕石線に入るのは、いわゆる「工臨」とよばれる工事列車で、砕石輸送のためのホキ800形貨車を機関車が牽引するものでした(砕石線は一部が電化されていましたが、ここに入線する工臨はDD51形などのディーゼル機関車が牽引するのが通例でした)。砕石線は駅の小野上温泉方から分岐していたことから出入りの際に小野上温泉方の本線へ引き上げる入換作業が必要だったようです。

砕石荷役線で留置中のホキ800形貨車

このように工事列車は長らく機関車が貨車を牽引する形態で行われてきましたが、JR東日本では事業用機関車の全廃を受け、砕石輸送兼車両牽引用の事業用気動車であるGV-E197系を製造しました。小野上駅からの砕石の発送も2021年頃からGV-E197系に切り替わり、このまま引き続き鉄道車両による砕石輸送が続いていくものと思われました。

2022年春、突然の線路撤去

ところが、2022年春に小野上駅を通りかかったところ、砕石線が撤去されているのを確認しました。

土砂に埋まりかけた砕石荷役線
線路撤去中の袋線
交換用の軌框が組まれている
分岐器撤去の準備工事
吾妻線配線略図(抜粋)

本線からの分岐部を含む、砕石線をすべて撤去する工事が行なわれていました。ホキ800形が常駐していた砕石荷役線は土砂で埋もれかけており使用されている形跡がありません。入換作業に使われていた袋線も一部撤去され、本線との分岐部では分岐器を撤去する工事が進行中でした。その後、残るレールもすべて撤去され、小野上駅は一時単純な2面2線の駅となってしまいました。

砕石線の再設置

このまま小野上駅からの砕石の発送は廃止されてしまうのかとも思われましたが、その後2022年秋ごろまでに砕石線が再設置されました。再設置後の配線を2023年6月上旬に見に行ってみました。

駅の横に再設置された砕石線
砕石荷役ホーム
吾妻線配線略図(抜粋)

旅客ホームの裏のかつて袋線があった場所に、荷役線とホームが新設されました。ホームにはすでに砕石が山盛りに積まれていて、いつでも荷役ができそうな雰囲気です。レールには使用された形跡がありますが、これが工事用の軌陸車の類なのか既にGV-E197系が試運転を済ませているのかは定かではありません。

駅の横に再設置された砕石線
出発信号機
停止位置目標
ATS地上子

興味深いことに、新設された荷役線は着発線を兼ねている模様です。荷役線の祖母島方には出発信号機が設置されており、2023年6月時点ではカバーが掛けられて使用停止されています。線路には停止位置目標やATS地上子も設置されています。祖母島方からやってきた工事列車がそのまま荷役線に入る構造とすることで、手間と人手のかかる入換作業を不要とする意図があるものとみられます。貨物会社でも、着発線でコンテナ荷役を行う構造を採用することで入換作業の簡素化とリードタイム短縮を実現した「E&S方式駅」がありますが、それの砕石輸送版といったところでしょうか。

場内信号機

祖母島方の場内信号機も見てみましたが、こちらは2023年6月時点ではまだ工事が行われていないのか既存の信号機のみで、砕石線方面への場内信号機が設置されたり進路表示機が設置されたりした様子はありませんでした。今後、供用開始までにさらに工事が行われることでしょう。

かつての砕石荷役線

一方、かつての砕石荷役線では線路が完全に撤去されていました。ホーム跡の石積みがすこし寂しげに見えました。

小野上駅の砕石線で使用されると思われるGV-E197系は、2023年6月に量産車となる第2編成が登場しました。新たな装いとなった小野上駅で活躍する姿が待ち遠しいですね。

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