相模鉄道本線の相模大塚駅から分岐している専用線です。1998年に貨物輸送が廃止されて以来20年近く使用されていない線路ですが、あえて「廃線跡」という言葉を使わないのには理由があります。
Googleマップで地図を見る相模大塚駅
相模大塚駅のホームに降り立つと、駅北側に留置線が広がっています。2つ隣のかしわ台駅やその先の厚木操車場など、周囲には電留線のある駅が密集している印象を受けます。
駅西側の踏切に進みます。左の線路2本が相鉄本線の上下線で、右が留置線の引上線です。そして、奥側で下り線から分岐する線路があります……。
さらに隣の踏切に移動すると、分岐の正体が判明します。
写真右の柵で閉ざされた線路が、厚木海軍飛行場専用線です。車両の通る空間が半分くらい木の枝に侵食されていますが、本線との接続は残されているようです。
相模大塚駅から直接専用線に乗り入れるのではなく、一旦引上げ線に入ってから折り返す形で専用線に入線する配線になっています。貨物列車は写真奥側のJR厚木駅から乗り入れてくるので、2回方向転換して専用線に向かっていたことになります。
柵の裏側には近隣住民向けの"通り道"がありました。カーブで見通しが悪い上に遮断機や警報版がないため(列車が往来している線路であれば)かなり危険な状態です。最も、通過する列車は1日に数本程度だったと思われるので、住宅密集地ではやむを得ないことなのでしょうか。
専用線ということもあり枕木は全て木製だろうと思っていたら、コンクリート製のものを発見しました。このまま線路とともに朽ちていく運命なのかと思うともったいない気がします。
一般道を迂回し、先に進んでみたいと思います。それにしても木が多い……。
飛行場専用線
1つ先の踏切に進んでみました。ここは正式な踏切のようで、警報機が設置されています。
季節は夏真っ盛りで、レールが草に埋もれかかっています。ただ専用線全体を通して、レールや架線を始めとして鉄道設備が撤去された形跡を発見できませんでした。
さらに1つ先の踏切(航3踏切)。比較的交通量が多い道路でしたが、こちらも警報機や看板は撤去されていませんでした。
線路は木の枝に覆われて通過不能です(遠目では森にしか見えません)。その割に枕木が全てコンクリートなのがちぐはぐです。
更に進むと、鋼鉄製の道路併用橋があります。下を走るのは日本の道路の大動脈である東名高速道路で、毎年少なからぬ補修費用が発生していると思われますが、撤去工事が行われた形跡はありません。その先の踏切も、機械の入った箱を含めて設備が残存しています。
厚木海軍飛行場
更に進むと飛行基地が近づいてきました。
写真の中央、飛行場の敷地境界で線路はぽつりと途切れています。ここまでほぼ無傷で残っていた線路は、あっけなく終点になりました。
終端付近の架線は不自然によれていました。飛行場構内まで続いていた電線を切断し、無理やりコンクリート柱に繋いだような印象です。
今回調査した厚木海軍飛行場専用線は、廃止というより「休止」というべき状態でした。住宅密集地帯の廃線跡は道路や建物などに転用されるケースが多く、今回の専用線はかなり稀なケースです。再び使用する計画があるのかとも思いましたが、飛行場構内は完全に更地になっていて線路の痕跡はありません(写真も撮影しましたが、軍関連施設のため掲載は控えさせていただきます)。果たして、真相は……。