貨物線2

四日市周辺貨物線2 旧四日市港駅

四日市駅を後にして、旧四日市港駅に向かいました。可動橋が上下する様子とともに、セメント貨車の入換を見学しました。

四日市駅から旧四日市港駅までの側線は通称四日市港線と呼ばれ、1985年まで関西本線の支線でしたが、現在は四日市駅構内扱いです。太平洋セメント四日市出荷センターに到着するセメント貨車が一日数往復行き来しています。四日市港線の途中には現役では日本で最後の鉄道可動橋となった末広可動橋があります。

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太平洋セメント専用線 13:54

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コスモ石油専用線を後にして、国道164号線から四日市港に向かいます。まずは北側の太平洋セメント藤原工場四日市出荷センター専用線を攻略することにします。

工場前の踏切から専用線の全貌を見ることができます。因みに写真の所々に「構内立入禁止」と書いてありますが、踏切は「構内」ではない、と思います(汗)。

荷役線2線の他に留置線が広がる
奥には機回しの為のポイント
荷役線

専用線は北から順にセメント荷役線2本、側線3本で構成されています。側線のうち1本には入換機関車用の建屋が設置されています。

旧四日市港駅方
古い建屋は使われていない模様

構内の線路配線については文章では説明し難いものがあるので、配線略図を参照ください。

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太平洋セメント専用線から線路沿いに旧四日市港駅へ向かいます。途中、線路が1本分岐していました。

カーブの先が先ほどの太平洋セメント専用線
謎の分岐 手前が旧四日市港駅に繋がる線路

線路はすぐ先で途切れますが、その先には撤去され残したレールが続き、四日市駅からの線路が合流するあたりで途切れます。交換設備だったのでしょうか。工業地帯らしく線路沿いには多くの工場が立ち並び、専用線や荷役設備の跡と思われるものがあるところも多いです。もしかするとこれも専用線だったのかもしれません。

途切れた線路の先にはレールが

旧四日市港駅専用線収受線 14:10

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専用線は四日市駅からの側線と合流し、その先が旧四日市港駅となります。四日市港駅は国鉄末期に廃止されましたが、線路は四日市駅構内扱いとして残っています。現在は太平洋セメント専用線の貨物のみを取り扱っていますが、航空写真を見ると伊勢湾倉庫に専用線の跡(後述するものを含めて少なくとも2本)があるのが分かります。

四日市駅方面には末広可動橋が見える
右が四日市駅方面、直進が太平洋セメント専用線

旧四日市港駅には線路が2本あって、太平洋セメント専用線の収受線として使われています。入換の様子は後ほど紹介することにして、ここでは線路の末端部まで進んでみることにします。

2本に分かれた収受線は右に曲がる
廃墟の倉庫の前にあるのは荷役ホーム跡でしょうか

しばらく進むと機回し用の片渡りがあります。この先ですぐ線路は途切れる…と書きたいところですが、よく見ると片方は車止めのみで線路は続いています。線路が続いているのを見ると終点まで行きたくなる性分で、一般道を回って線路終端まで行ってみることにします。

カーブの途中で機回し用のポイント
車止めですが左の線路はまだ続いています
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何のことはない、線路はただすぐ先で途切れているだけです。この辺りは伊勢湾倉庫の敷地内で、専用線があったようですが荷役ホームなどの跡は確認できませんでした。

線路終端

末広可動橋と貨車入換 14:23

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さて、そろそろ入換の時刻が近付いてきたので末広可動橋が見える船着場に移動します。停まっている船はほとんどどなく、可動橋のかなり近くまで接近することが出来ました。なお撮影場所より可動橋側と運河の対岸は立入禁止となっていました。

他にはない特徴的な形
振り返ると道路の可動橋もある

行動開始から1時間半が経ち休憩としたいところだったのですが、炎天下の下日陰もない船着場ではむしろ体力を消費してしまいました。しかし初めて可動橋を見る興奮が大きかったからか、その割には疲れを感じませんでした。以下、可動橋の動きを時間とともに述べていきます。

14:39頃、入換の操車掛が自転車に乗って来て、橋梁脇の操作室に入りました。四日市界隈の入換作業は名古屋臨海鉄道が受託していて、この操車掛も名古屋臨海鉄道の社員だと思われます。

操車掛が操作室に入る

14:41頃、サイレンとともに可動橋が下がり始めました。普段は下に船を通すために橋を上げていますが、列車が通るときだけこのように下げています。とはいえこの幅ではそれほど大きな船は通れないでしょう。

ゆっくり動き始める
少し傾いてきた
橋梁の先端部ではレールが剥き出しになっている
橋梁の根元部分

2分ほどかけて橋を下げたあとは操車掛は自転車に乗ってどこかに行き、後には列車の通るのを待つのみとなった橋梁が残りました。操車掛は専用線から貨車を引き出しに行ったのでしょうか。

あともう少し
接続完了!
車両が通れる状態となった末広可動橋
操車掛は太平洋セメントの工場へ

10分ほど待つと踏切が鳴り始め、レールが軋む音も響いてきました。そして14:55頃、ついに機関車と貨車が末広可動橋を渡り始めました。列車は特に大きな音を立てることもなくゆっくりと橋梁を通過していきました。低速での入換とはいえ、可動部と固定部の線路をどうやって接続しているのか気になります。

機関車が見え始める
機関車と貨車が末広可動橋を渡る
引いてもう一枚

旧四日市港駅に戻り、入換の様子を観察します。14:58頃に先ほどの四日市駅からの貨車が到着します。到着後はDD51が切り離され、先ほど牽いてきた貨車の四日市駅方に退避します。この時一旦踏切が開きました。

旧四日市港駅にやってきた入換車両
機関車が切り離された貨車

暫くして15:03頃、太平洋セメント専用線からの貨車が同社所有のDD452牽引で到着します。この時編成後部は踏切を支障したままとなります。

太平洋セメント専用線からの入換車両

すぐにDD452が切り離され、退避していたDD51が連結されます。そして15:06には早々と四日市方面に貨車は発車してきます。そしてDD452の方は、まるで急かすようにその貨車のすぐ後ろを続行し、四日市駅からの貨車に連結され、15:08に太平洋セメント専用線方向へ発車していきます。踏切は専用線からの貨車が到着してから閉まったままでした。このように忙しい入れ替えではありますが、この旧四日市港駅や専用線の線路上を多くの工場の入口が横断していて、入換中はそれらの工場の門が塞がれることを考えると手早く済ませるのも納得がいきます。

四日市駅へ向かう入換車両の続行
貨車を連結して太平洋セメント専用線へ発車

太平洋セメント専用線への貨車を見送ってから末広可動橋に戻ると、すでに四日市駅へ行く貨車は通過したあとです。15:18頃に、先ほどと同じく自転車で操車掛の方が到着し、直ぐに橋を跳ね上げ始めます。サイレンが鳴り、つい今まで列車が通っていた橋が持ち上がっていきます。

サイレンが鳴り始める
橋が動き始める
ゆっくりと、確実に橋が上がっていく
跳ね上げ完了

橋が完全に持ち上がりサイレンが止まると、操車掛の方は何事もなかったように四日市駅に戻っていきました。今回見学した可動橋は重要文化財にも指定されているものですが、運用にあたっては一々橋を下げる必要があり、運用や保守が煩雑だと思われます。セメントの輸送が自動車転換ということになれば、三岐鉄道ともども廃止の危機にさらされることは容易に想像できます。もう二度と動く姿を見ることは出来ないかもしれない。そう思いながら末広可動橋を後にしました。

再びこの風景を見ることは出来るのだろうか

※ 写真は全て踏切または公道などから撮影。

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調査日
2013年7月31日
公開日
2013年11月16日
最終更新日
2013年12月29日(配線略図修正)
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