東京~上野間に線路を増設し、東北本線・常磐線と東海道本線を直結する工事です。
建設経緯
上野~東京間にはもともと山手線、京浜東北線の線路の他に複線の列車線があり、古くは東北方面と東京駅を結ぶ特急や貨物列車などが走っていました。晩年は回送列車などに利用されていましたが、1983年に東北新幹線建設用地の捻出のため廃止され、跡地は新幹線線路の敷地や上野駅・東京駅留置線に転用されました。
新幹線の上に線路を架設して列車線を存続させる案も検討されたようですが、
- 33‰という急勾配のため、団体・荷物列車をはじめとする機関車牽引列車の通過が困難(ただし、試運転ではEF65が重連で通過したそうです)
- 神田付近の騒音公害問題
- 国鉄の債務増加に伴う建設費圧縮
などの理由で、高架橋の上部に線路を増設できる構造にはしたものの本格的な工事は行われませんでした。
しかし、2000年代に入って列車は高性能の電車が中心となり、勾配の問題が克服できる見通しが立ったことから、建設工事が開始されました。新設高架区間の騒音問題や東日本大震災の影響で工事は遅れたものの、2014年度末に竣工する予定です。
上野東京ライン開業により、上野~東京駅間の所要時間が約11分短縮されるとともに、京浜東北線・山手線の上野~御徒町間で現在200%近い混雑率が180%に緩和されると推定されています。なお、計画段階では「東北縦貫線」という名称でしたが、2013年12月に公式愛称「上野東京ライン」が発表されました。正式な路線名は「東北本線」です。
運行形態
上野東京ラインには「東北本線・高崎線~東海道本線」と「常磐線」の2系統の列車が乗り入れます。最初に各系統の大まかな運転本数をまとめてみたいと思います。
「東北本線・高崎線~東海道本線」系統は、朝ラッシュ時3-6分、データイム10分、夕ラッシュ時7-12分間隔の運転です。東海道本線からはほぼ全列車が直通するのに対し、宇都宮線・高崎線からはそれぞれ毎時4本のうち1本が上野駅で折り返すようです。
続いて、「常磐線」系統はデータイムに毎時2本、夕ラッシュ時に毎時3本程度が運転されます。朝ラッシュ時に同線では毎時20本近い列車が運転されていますが、そのうち直通するのは成田・取手~上野間上り快速電車の5本のみです。日中は中距離普通列車と特別快速が毎時各1本ずつ品川まで乗り入れ、夕方以降は再び快速電車が直通するようです。常磐線では、特別快速の停車駅見直しも発表されました。
その他に常磐線の特急「ひたち」「ときわ」も品川まで運転されます。同列車は現在上野~いわき間で運転されている「スーパーひたち」「フレッシュひたち」を改称(それぞれ1985年・1998年まで運転されていた急行・特急列車の名称を再使用)するものです。日中の全列車と早朝・夕夜間帯の一部列車が品川に直通するようです。この列車に使用されるE657系には2013年より改修工事が行われていて、従来の指定席・自由席の区別をなくした新しい座席指定システムが導入されます。
臨時列車では「踊り子」「ぶらり横浜・鎌倉」「きぬがわ」も運転されるようです。
続いて、東京、上野の各駅について配線とともに運行形態を分析していきます。
東京駅
東京駅は2面4線で、有楽町側はかつて機関車牽引の寝台特急が走っていた名残の機待線が残る、終着駅として最適化された配線です。信号の設置状況などから、線路用途は次のようになると思われます。
線路 | 使用用途 |
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開業前 | 開業後 |
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7番線 | 東海道折返し | 上野方面直通 |
8番線 | 東海道折返し | 東海道折返し(終着) |
9番線 | 東海道折返し | 東海道折返し(始発) |
10番線 | 東海道折返し | 品川方面直通 |
上野東京ラインに直通するのは外側2線が中心となり、伊豆方面の特急は内側2線に発着すると思われます。有楽町側から外側2線に進入・出発するには分岐器の分岐側を通りますが、このような配線はそれほど珍しいものではないので、上野駅ほどにはダイヤ作成の障害にならないと思います。
上野駅
上野駅も終着駅型配線です。13本の線路が迷路のように入り組んだ分岐器を通って、東北本線、常磐線の合計6本の線路に分かれます。その複雑さは、5-7番線から東北本線へ発着する経路が理論上それぞれ3通り考えられるほど。上野駅の主な線路用途は以下のようになります。なお、一部作者の予想を交えていますことをご了承願います。
線路 | 使用用途 |
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開業前 | 開業後 |
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5番線 | 東北高崎折返し | 東北高崎下り直通 |
6番線 | 東北高崎折返し | 東北高崎・常磐下り直通 |
7番線 | 東北高崎折返し | 東北高崎上り直通 |
8番線 | 東北高崎折返し | 常磐特急下り直通 |
9番線 | 常磐中距離折返し | 常磐(含特急)上り直通 |
10番線 | 常磐中距離折返し | 常磐折返し |
11番線 | 常磐快速折返し | 常磐折返し |
12番線 | 常磐快速折返し | 常磐折返し |
13番線 | 東北高崎折返し | 臨時寝台特急 |
14番線 | 東北高崎折返し | 高崎特急折返し |
15番線 | 東北高崎折返し | 高崎特急折返し |
16番線 | 常磐特急折返し | 常磐特急折返し(朝夕のみ) |
17番線 | 常磐特急折返し | 常磐特急折返し(朝夕のみ) |
※ 配線図で上から順に1-4番線(京浜東北・山手線)5-12番線(高架ホーム)、13-17番線(地上ホーム)
上野東京ラインに直通する5-9番線の用途は、某鉄道雑誌に記載がありました。また、10-12番線は常磐線にしか物理的に線路が繋がっていないので、常磐線の折返しに使われるのはまず間違いありません。しかし、残りの13番線以降の使用方法はよく分かりません。13-15番線は今まで通り東北本線・高崎線の折り返しに使われる可能性が高いものの、16,17番線はラッシュ時に常磐線特急列車が折返す程度しか使い道がなさそうです(常磐線特急列車では新たな検札システムが導入されるため、従来このホームにあった特急券の中間改札も不要になります)。13番線は、高架ホームを上野東京ライン試運転で使用するために2014年のダイヤ改正から東北本線・高崎線の普通列車が発着するようになりましたが、それ以前は一部の通勤列車や「北陸」「北斗星」といった寝台特急が朝晩に発着するのみでした。2015年のダイヤ改正では寝台特急はほぼ消滅することから、13番線を廃止する可能性もあるかもしれません。
さて、上の使用方法で予想される問題点です。この使用方法では、日暮里側で6番線から発車する常磐線下り電車が、東北高崎線上りと平面交差することになります。常磐線特急列車に至っては、御徒町側で上り方面の全列車と支障します。どちらも本数が少ないため平常時は問題ないということかもしれませんが、輸送障害時は常磐線との直通運転を中止しないと混乱が起こりそうです。
また、5番線から東北本線方面に出発する際にDSS(ダブルスイップスイッチ)の分岐側を通過します。もしこのまま何も配線改良が行われなければ、DSSの分岐側を1日百数十本もの列車が通過することになりそうです(趣味的には面白いですが……)。これについては、上野東京ライン関連の工事が一段落してから保線車用側線を廃止すれば、このDSSを通常の片渡り分岐に改良できるでしょう。因みに、調べてみるとこの側線は、1960年代に高架ホーム~地上ホーム間の連絡線があった名残のようです(参考:上野配線図: 懐かしい駅の風景~線路配線図とともに)。
工事概要
ボタンを押して配線の変遷をご覧ください。上野駅の配線略図は東北本線配線略図も合わせて御覧ください。
上野東京ライン配線略図(工事後)
工事区間は主に3つの区間に分けられます。まず、東京駅構内と秋葉原~上野間の計2.5kmでは、軌道改良工事が行われました。これは、従来のバラスト軌道を枕木直結軌道などの省力化軌道に変更し、あわせて縦貫線本線と秋葉原駅付近の留置線への通路線(上野駅構内扱い)を分離する工事です。山手線・京浜東北線寄りから順番に複線の上下本線、秋葉原駅付近留置線への単線の通路線の合わせて3線が設置されています。上野駅では分岐器の重軌条化も実施されました。
東京~秋葉原間1.3kmでは新幹線線路の上に高架を設置する工事が行われています。
工事は概ね終了し、7月下旬からは実際の車両を使用した試運転が始まっています。
配線としては、東京駅がほぼ2面4線の中間駅構造となり、上野駅では十数本ある線路のうち5~9番線から上野東京ライン方面へ発着が可能です。構造上は東北本線・高崎線・常磐線と東海道本線が直通運転できますが、上野駅では常磐線下りと東北本線・高崎線上りが平面交差する配線となっています。
この他田町~品川間で20万m2に及ぶ敷地面積を抱えた車両基地(東京機関区・田町車両センター・品川客車区)を廃止し、新たに電留線(東京総合車両センター田町センター)を設置しています。山手線・京浜東北線には、線路別複々線の電車線駅も新設されます。これについては詳しくは触れませんが、現在旧東京機関区跡(東海道本線下り線側)に電留線が新設され、旧田町車両センター(東海道本線上り線・山手線側)は線路が撤去されました。配線略図はこちらをご覧ください。
工事観察記
月1度は更新していく予定です。
工事観察まとめ 御徒町駅 / 秋葉原駅
車窓動画
新橋~品川間前面展望
特集トップへ東北本線(東京~黒磯)配線略図